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登山の服装・重ね着(レイヤリング)の基本|寒暖差に強くなる体温調節術

山のコラム | 2026/7/22 | 2026/8/4 | 136


登山におけるウェアは、単なる「服」ではありません。刻一刻と変化する自然環境から身を守り、常に体を最適な状態に保つための、いわば「可動式のシェルター」です。

吹きつける強風、急な雨、そして激しい運動による発汗。これらすべてに対応し、体をドライで適温に保つための知恵が、服を層(レイヤー)で重ねる「レイヤリング」です。この基本を押さえておくことで、低体温症などのリスクを避けながら、快適に山を歩きやすくなります。
なぜ「厚着」ではなく「重ね着」なのか
街中では厚手のコート1枚で十分に寒さをしのげますが、山ではその着方がリスクにつながることがあります。山でレイヤリングが重視される理由は、大きく2つあります。
「汗冷え」リスクを避けるため
厚着のまま登ると大量の汗をかきます。その水分が風や外気で冷やされ、体温を急激に奪ってしまう現象が「汗冷え」です。これは冬の雪山だけでなく、夏山でも風が強ければ低体温症につながることがあるため、季節を問わず警戒すべきリスクとされています。
「微調整」で体力の消耗を防ぐため
役割の異なる薄い服を重ね、状況に合わせて脱ぎ着することで、衣服内の温度と湿度を細かくコントロールできます。無駄な汗をかかず、エネルギー消費を抑えて体力を温存するためには、こまめな調整が欠かせません。
三つのレイヤーが果たす役割
レイヤリングは、大きく「ベース」「ミドル」「アウター」の3層で構成されます。それぞれの役割を理解しておきましょう。
① ベースレイヤー(肌着):汗を素早く逃がす
肌に直接触れる、全レイヤーの土台となる重要なアイテムです。

■ 役割:かいた汗を素早く吸収し、外側へ拡散・蒸発させて肌をドライに保つ

■ 素材の目安:ポリエステルなどの化繊やメリノウールが基本です。綿(コットン)は乾きにくく水分を保持し続けるため、登山用のベースレイヤーには適していないとされています。
② ミドルレイヤー(中間着):熱を蓄えつつ湿気を逃がす
ベースレイヤーの上に重ねる、温度調節の役割を担う層です。

■ 役割:体温で温まった空気の層(デッドエア)を保ちつつ、内側から上がってきた湿気を外へ逃がす(透湿性)

■ 素材の目安:フリースや薄手の化繊インサレーション、通気性を持たせたアクティブインサレーションなどが適しています。
③ アウターレイヤー(シェル):外の環境から身を守る
一番外側に着る、いわば「盾」の役割を持つ層です。
晴天時でも、強風による体温低下(風冷え)を防ぐために、ザックの取り出しやすい場所に常備しておくと安心です。

■ 役割:雨・風・雪といった外部の悪天候から体を守りつつ、衣服内の蒸れを外へ逃がす

■ 素材の目安:ゴアテックス(GORE-TEX)に代表される防水透湿素材のレインウェアが基本です。
シーン別・レイヤリングの実践テクニック
登り(行動中)
「少し肌寒いかな」と感じるくらいで歩き始めるのが目安です。歩き出すとすぐに体温が上がるため、ベースレイヤー+薄手のシャツ程度に抑え、「汗をかきすぎない」ことを最優先にします。
山頂・休憩中
足を止めた瞬間から、体の熱は奪われやすくなります。寒さを感じる前に、アウターや保温着(ダウンなど)を早めに羽織るのがポイントです。「冷える前に着る」ことが、無駄な体力消耗を防ぎ、疲労を残さないコツとされています。
下山
登りに比べて心拍数が上がりにくく、体温が上がりにくいのが下山の特徴です。登りよりも一枚多く着込むか、防風性のあるシェルを羽織って、体内の熱を逃がさないよう調整しましょう。
避けたい「山のNG行動」
行動中(歩行中)に、保温性の高いダウンジャケットを着たまま歩くのは避けましょう。ダウンは水濡れに弱く、汗で羽毛が潰れると保温力が大きく低下してしまいます。行動中の保温には、汗を吸っても乾きやすく通気性の高い「フリース」や「化繊中綿」を選ぶのが基本です。
季節別・重ね着の枚数の目安
■ 夏山:ベースレイヤー+薄手シャツが基本。休憩時や稜線での強風に備え、薄手のアウター(レインウェア兼用)を1枚必ず携行します。

■ 春・秋:ベースレイヤー+ミドルレイヤー(フリースなど)+アウターの3層が基本です。朝晩の冷え込みに備え、保温着も1枚追加しておくと安心です。

■ 冬山:ベースレイヤーを厚手のものに変え、ミドルレイヤーを2枚重ねる、あるいはインサレーションジャケットを追加するなど、体感温度に応じて層を増やします。稜線での行動中は風を通さないアウターが必須です。
まとめ:ウェアを操り、自然と上手に付き合う
「少し暑いな」と思ったらフロントのジッパーを開ける。「風が出てきたな」と思ったらシェルを羽織る。このわずかな手間を惜しまないことが、疲労を防ぎ、安全な下山につながります。

自分の体が発するサインに気づき、体温を自分でコントロールできるようになると、山の景色はより安全で親しみやすいものに変わっていくはずです。次の山行では、ぜひクローゼットにある服の「役割」を意識してパッキングしてみてください。

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